こころの日記

伝説は、いつまで経っても、伝説である。

伝説というものは心臓に悪いものである

 僕は車校に行っている。進路も決定し,学生として入校したのだ。普通に暇のある時にでも行けば良かったのだろうが,学生として入った方が御得だった為今の内に取ってしまうことにしていた。


 そんな或る日である。所内の技能教習もいよいよ折り返し地点を迎え,S字クランクの練習をすることになった。其の時に教習指導員として助手席に座った先生*1との話である。
 此の先生とは以前学科教習の時にも出会っていた。とても面白い先生で,特徴的な笑い声で笑う人だった。技能教習の時も変わらず,まあまあなジョークを言ってからやり過ぎな笑い声を上げていたのだが。


「じゃあS字のとこ一遍走ってみるからね。」
 と言って,S字迄走って行った。そして気を付ける部分を走りながら教えてくれていた。其処までは普通だった。
 此の自動車学校には,S字が2か所ある。普通は奥にあるS字コースを走るのだが,其処に車が未だ走っていたら手前のコースを走ることになっていたのだ。
 其の為,奥に車が走っていた時のケースを考えて手前に入ってみせることになったのだが,先生が突然
「ちょっと時間無いから早く行くからね。」
 とだけ言って、物凄いスピードを出した。S字なのに。
 助手席に座っていたのだが,物凄く怖かった。本人はあの笑い声を上げながら悠々と走っているものだったが,こっちはそれどころじゃない。助手席に用意されているブレーキを踏みたくて仕方がなかった。此の細い道って,サードギアで走るもんでしたかね。
 そんな僕の不安を余所に,何事も無かったかの様にS字を終わらせた先生は,
「まあぶつからなければ良いからね。いひひひ。」
 何がいひひひだ,そう心の中で思いながら,此の時間が終わったことにほっと胸を撫で下ろすのだった。

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*1:まあまあなジョークを言っては過剰に笑う。